一般社団法人 北海道環境保全技術協会は、さまざまな北海道の環境保全問題に、各分野の技術を総合してお応えする組織です。
 例えば、北海道では、今後、次のような地盤環境問題の発生が予測されます。一般社団法人 北海道環境保全技術協会は、このような課題に地域の担い手として取り組んで行きます。
<一般社団法人 北海道環境保全技術協会の取り組み>
●総合的環境保全問題に対する取り組み(想定事例1-3)
●地域的環境保全問題に対する取り組み(想定事例6-7)
●社会的環境保全問題に対する取り組み(想定事例5-7)
●業際的環境保全問題に対する取り組み(想定事例3-4)
● 想定事例1.橋脚工事の掘削土を再利用しようとしたら土壌汚染(ヒ素)が確認された
● 想定事例2.トンネル工事計画で汚染土(水)の発生が懸念される
● 想定事例3.マンションを建てたいが工場の跡地らしい
● 想定事例4.ある土地を担保に融資をしたいが、担保価値に問題がないか
● 想定事例5.クリーニング業で特定有害物質を使用するが、操業を続けて問題ないか
● 想定事例6.ホタテのウロを山中で産廃処理しているが、問題ないのか
● 想定事例7.牛舎や豚舎からの糞尿が河川を汚染しているようだが
< その他の北海道の環境保全に関わる課題 >
●想定事例1.橋脚工事の掘削土を再利用しようとしたら土壌汚染(ヒ素)が確認された

 某自治体発注の橋梁建設工事で実際にあった例です。工事を請け負った建設会社が掘削残土の分析を行ったところ、基準値を超えるヒ素が検出され、現場からの持ち出しができなくなりました。役所は、汚染土壌処理は設計に見込んでいないので業者負担で土壌処理するように指示、建設会社が産廃業者に引取りを委託したところ、7万円/立米の費用見積もりが提示されました。
 工事設計の段階で、然るべき組織に相談していれば、掘削土の汚染は予測できたはず。掘削工事を行う段階で、飛散拡散による汚染拡大防止措置や仮置き場の設備計画を行っておく必要がありました。膨大にみえる土壌処理費も、精度の高い調査を行えば、絞込みを行うことで、縮減が可能です。土壌処理は、さまざまな選択肢から経費効果と工事環境にあわせて選択することが可能です。
 計画時点で、調査、分析、浄化工事の広範囲にわたって知識と経験を集約した相談窓口に一括対応をもとめることが望まれます。
道路のり面掘削や河川改修工事、港湾工事などで、同様の問題が発生する可能性があります。
 
●想定事例2.トンネル工事計画で汚染土(水)の発生が懸念される

 北海道には鉱化変質や温泉が多く、土木工事の対象となる地盤が自然由来の有害重金属で汚染されている事例がかなりあります。トンネルなど、大量の掘削土が発生することが予想される場合には、事前にその対策を十分検討しておくことが望ましい。
 汚染土が出てから対策をするのでは、住民からの工事差し止め要求など、計画に大きな影響が発生します。また、一律に環境基準に合致するよう処理を行えば、結局、膨大な対策費用を負担しなければなりません。事前に汚染の程度と規模を正確に予測(調査・分析・評価)し、これが環境に放出された場合の影響予測(環境アセスメント、地下水シミュレーション)を行い、住民ときちんと合意形成(リスクコミュニケーション)したうえで、目的にかなった合理的な汚染処理(廃水処理、残土処理)を行い、長期的な監視(環境モニタリング)を行うことで、結局は合理的でかつ地域環境にマッチし、コストも最低限に抑えた事業を推進することができます。
 環境汚染は、単純に当該工事だけの問題ではなく、地域環境や住民対策を含めて考える必要があります。また、リスク評価に基づく適正な措置レベルを講じることが基本的な考え方です。単に調査や分析を行えば良いわけではなく、適切な計画立案や実際の具体的作業などが可能な、総合的なソリューションを提供することが必要です。
ダム基礎岩盤掘削市街地における建築基礎工事などの大規模土工を行う際には、同様の問題発生を想定しておくことが必要です。
 
●想定事例3.マンションを建てたいが工場の跡地らしい

 工場跡地であれば操業中に使用した有機塩素系溶剤や重金属などによって敷地が汚染され、工事が差し止めになったり、マンションを購入した住民から瑕疵担保責任をめぐって訴訟を起こされたりする事例が多く発生しています。また、土壌汚染対策法の適用対象である可能性もあります。
 土地の取得前であれば、まず、当該不動産に関わる環境リスクを把握するために環境サイトアセスメント(ASTM Phase I/II ESA)を実施し、土地取引の安全を確保する必要があります。土壌汚染対策法の適用対象であれば、同法に指定される調査(指定調査機関が実施)を行い、行政担当者に届け出るとともに、汚染があれば必要な措置(汚染土壌処理)を講じなければなりません。汚染土壌処理に当たっては、汚染の実態を正確に把握し、対象土壌を絞り込んで経費の縮減を図るとともに、近隣住民とをきちんとした合意形成を行って円滑に工事を進めることが必要です
 都市型の汚染の場合、ビジネスリスクの考え方が重要です。まず、デューデリジェンスツールを要求に合わせてさまざま準備しておくことが必要です。さらに、住民に対するリスクコミュニケーションのノウハウも求められます。まさに、最新の知識ノウハウをいかに集積するかが求められる分野です。
特に、めっき工場金属加工工場電気・電子部品製造工場車両工場などの跡地を用途変更してマンション、住宅等を建設する場合には注意が必要です。
 
●想定事例4.ある土地を担保に融資をしたいが、担保価値に問題がないか

 当該地の土壌が汚染されていた場合、汚染浄化による修復費用、機会の逸失利益、スティグマ(嫌悪感)などによる減価が発生します。したがって、路線価など旧来の土地価格評価に基づく与信は実態を反映しない可能性があります。
 まず、当該地の汚染可能性を確認するのであれば、汚染データベースシステムによる簡易履歴調査(フェイズ0.3調査)を行う必要があります。信頼性を要求されるなら、規格に基づいた環境リスクアセスメント(ASTM ESA Phase I/II)を実施するべきです。不動産鑑定を行う場合には、汚染等の有無に関しての情報を反映した改正不動産鑑定評価基準(H15.1.1)に基づいて行う必要があります。実際の減価の評価にあたっては当該地の汚染実態に基づいて修復工事の積算を行い、スティグマについて適正な評価を行ったうえで、減価額を決定する必要があります。
 環境リスクの評価は金融や保険の分野にも関係しています。これまで関連の無かった分野をつなぐ横の連携組織の構築が求められています。
 最近、土壌汚染の調査・浄化にかかわる保険商品も開発されています。このような動きに対して常に最新の情報を取得し、議論を重ねておく必要があります。
 
●想定事例5.クリーニング業で特定有害物質を使用するが、操業を続けて問題ないか

 ドライクリーニングには、環境基準で有害物質に指定されているテトラクロロエチレン(パークレン)を洗浄用溶剤として使用しています。これは発がん性が指摘されている物質で、漏れ出せば、広域に地下水を汚染し、水質汚濁防止法によって処罰を受ける可能性があります。
また、作業場の室内や土壌中に揮発ガスとして拡散し、従業員や近隣住民の健康被害を引き起こす可能性があります。
 まず、工場をチェックし、現状で溶剤の漏れ出しがないか確認し、あればこの改善を行います。汚染があった場合には、土壌ガス調査でホットスポットの特定(概略調査)を行い、さらにボーリング調査等で詳しく汚染実態を把握(詳細調査)します。もし、広域汚染の原因者であれば、担当行政と相談しながら浄化に取り組むことになります。いずれにしても、行政や地域住民とのコンセンサスを作りながら(リスクコミュニケーション)、環境改善に取り組むことが必要です。クリーニング工場は水濁法上の特定施設に該当し、廃業したり、土地の用途変更を行う場合には土壌汚染対策法に基づいた調査や届出が必要です。
 クリーニング業等による都市型汚染の発生源は、市街地や住宅地のなかにあり、直接、暴露機会が大きいだけに社会的に大きな問題です。このような環境汚染による社会問題は一企業の取り組みでは解決できるものではなく、行政や関連組織が真剣に取り組むべき課題と言えます。
 リスクコミュニケーションは、住民と行政をつなぐ重要な役割を担っています。「協会」のような第三者的立場でこれを実施することが望まれます。
 
●想定事例6.ホタテのウロを山中で産廃処理しているが、問題ないのか

 ホタテのウロに限らず、生物性の廃棄物は、分解して硝酸性窒素を発生させ、地下に浸透して広域の地下水汚染の原因になる可能性があります。また産廃施設の防水シートは破れやすく、悪臭をともなう浸透水が、直接下流に排出される可能性があります。ウロには、特定有害物質であるカドミウムが高濃度で含まれることが知られており、河川や湖沼に排水されれば、広域汚染につながる可能性があります。
 すでに稼動している産廃施設については、観測井戸などのモニタリング施設を設け、汚染が拡大する前にその危険を察知することが必要です。カドミウムのような重金属は、シーリングソイル工法などの低負荷技術によって、不溶化処理したり、浸透水処理機能をもつ機能性遮水ゾーンを設けることができます。
 水産業は北海道の基幹産業である一方、その産業廃棄物が海岸や後背の山間地に硝酸性窒素、悪臭、重金属などの汚染をもたらしています。これは北海道特有の問題として地域をあげて取り組むべき課題です。
 
●想定事例7.牛舎や豚舎からの糞尿が河川を汚染しているようだが

 
北海道における畜産公害は深刻な問題であり、特に、排出される硝酸性窒素は河川を富栄養化したり、地下水に入り込んで、飲料不適になる場合があります。
 豚房、牛房、馬房は水質汚濁防止法上の特定施設にあたり、これらからの糞尿の分解生成物である硝酸性窒素の排出には、同法に基づく排水基準が適用されます。汚染は集団酪農地帯を発生源とした広域汚染であることが多く、地表水、地下水の地域全体の水収支に基づいて汚染メカニズムを考える必要があります。すなわち、水文水理調査に基づいて広域の地下水シミュレーションを行い、自然減衰効果などのパラメータを考慮した将来予測を行うことが有効です。この上で、湖沼の富栄養化防止対策技術の導入や、地域水源の確保の検討を行うことが望まれます。それぞれの発生源に対する対策は、施設の改善やバイオプラントの導入など、その費用対効果を総合的に検討する必要があります。
 同様に、畜産業による硝酸性窒素による水資源の汚染も北海道特有の問題です。単に個別の設備改善をするだけでなく、地域全体としての総合的な取り組みが望まれます。
 
<その他の北海道の環境保全に関わる課題>  
以上の想定事例に加え、北海道では次のような環境保全に関わる課題が発生し、その解決が迫られています。

●休廃止鉱山からの酸性水、重金属汚染水の排水  
北海道には、多くの休廃止鉱山があり、ここからの排水処理に年間相当額の処理費用が投入されています。また、地質時代からの重金属(水銀、ヒ素)の排出によって、下流域が広域にわたって汚染されていることがあります。

●炭鉱ぼた山、ずり山からの汚染水の排水  
「ぼた」や「ずり」に黄鉄鉱が含まれていると、酸化して酸性水を排出することがあります。酸性水は、さらに重金属等を溶解し、環境排出を促進します。

●バッテリー等の放置や廃棄による鉛汚染  
旧炭鉱で使用した鉛バッテリーが山中に投棄されていた事例がありました。

●ガソリンスタンド地下タンクからの油汚染  
老朽化した地下タンクからの油漏れが発生する可能性があります。特に、軟弱地盤では、継ぎ目のパイプがずれたり亀裂が入り、油漏れが発生する場合があります。

●残留農薬による農地の劣化  
北海道のような畑作地帯では、使用した農薬が残留し、次第に地力が劣化したり、農作物に影響を与えることがあります。このような汚染の評価や対策が求められています。

●操車場、車両工場の汚染  
燃料油の地下浸透や、塗料からの重金属、変電設備からのPCB汚染等が想定されます。

●製紙工場のスラッジからの汚染拡散  
北海道に多い製紙工場では、スラッジを野積みにしていることが多く、ここから有害物質を含む排水が地下浸透したり、河川排出されている事例があります。

●精錬工場鉱滓による汚染  
六価クロム鉱滓による汚染問題の解決は、いまだに特定地域の課題となっています。